「高輪ゲートウェイ」駅は適当なネーミングか?
2018年12月4日。JR東日本が2020年に開設する山手線・京浜東北線新駅の名称を「高輪ゲートウェイ駅」とすると発表した。
この発表が波紋を呼んでおり、鉄道や都市開発にさほど興味がない層でも話題になっている。
今回は、この件について感じたことをまとめる。
「高輪ゲートウェイ」駅への反応
JR東日本がこの名称に決定した理由は次のとおりである。
この地域は、古来より街道が通じ江戸の玄関口として賑わいをみせた地であり、明治時代には地域をつなぐ鉄道が開通した由緒あるエリアという歴史的背景を持っています。
2018.12.4 JR東日本プレスリリース「田町~品川駅間の新駅の駅名決定について」より引用
新しい街は、世界中から先進的な企業と人材が集う国際交流拠点の形成を目指しており、新駅はこの地域の歴史を受け継ぎ、今後も交流拠点としての機能を担うことになります。
新しい駅が、過去と未来、日本と世界、そして多くの人々をつなぐ結節点として、街全体の発展に寄与するよう選定しました。
これに対しての世間の反応は、賛否両論あるようだが、ネガティブなものが多いように感じる。
その理由としては、
- 駅名が長い
- カタカナまじりの駅名が格好悪い
- 公募したのに順位が低いものに決定していて、公募の意味がない
等々が見受けられる。
駅名に感じる違和感
私も、この駅名は単純に「長いし、格好いいと思えない」から好きになれない。
しかし、それとは別に「ゲートウェイ」という部分に根本的な違和感を覚えたので、自分なりにそう感じる理由を整理すると、主に次の2点が考えられる。
(1)「場所(地理的要件)」よりも「機能(性質)」が目立つ駅名。
駅名というのは、一般的にはその駅が存在する「場所(地理的要件)」を表すことが多い。これには、ある程度の広がりを持つ「エリア」の中心的な駅を指す場合もあれば、”〇〇市役所前”といった「点」に近いものまであるが、やはり「場所」の概念ということは変わりない。これに対して、「ゲートウェイ(gateway)」とは”出入り口、道”またはIT用語で”ネットワークとネットワークを接続するためのもの”といった意味で、主に「機能(性質)」を表すものである。
ところで、なぜ駅名は基本的に「場所」を採用するのか。それは、鉄道の主たる役目は出発地(場所)から目的地(場所)への移動手段であるからである。つまり、ある場所と鉄道ネットワークの接続点である駅の名は「場所」を表すのが自然である。にもかかわらず、「ゲートウェイ」という駅名としては珍奇な単語が採用されたことによって、「高輪(場所)」よりも「ゲートウェイ(機能)」が目立ってしまっており、違和感を覚えてしまうのである。
それでももし、「場所」よりも「機能」を重視した駅名にするとすれば、極端な例えだが、乗客が駅の外に出ず、乗り換えだけをするような駅があるならば、それは「〇〇乗換駅」というような駅名でも構わないだろう。
では、この駅は「ゲートウェイ」としての機能(性質)が濃い駅なのだろうか。
(2)機能(性質)を表す駅名が、この駅の機能の実態とそぐわない。
あえて機能面を駅名に取り入れるとしても、そもそもこの駅は「ゲートウェイ」としての機能(性質)が濃いとは思えない。
冒頭で引用したJR東日本の公式発表にもあるが、ここでの「ゲートウェイ」という言葉は「日本の玄関口・結節点」といった意味合いを想起させるものである。しかし、この駅はこの区間では並行して走る山手線と京浜東北線の途中駅であり、羽田空港への路線とも、新幹線や他の主要路線とも接続していない。果たして、これで「玄関口・結節点」と言えるのだろうか。
今後の展開
このように考えたとき、やはり駅名として整合性を持たせようとするならば、「高輪ゲートウェイ」という「場所」を生みだすしかない。JR東日本はこの一帯を開発しており、そのコンセプトは「グローバルゲートウェイ品川」である。そして、この開発で誕生する街を「高輪ゲートウェイ(シティ等)」にするつもりなのだろう。
おそらく、街の名前を「〇〇ゲートウェイ…」にすることは決めていたが、〇〇の部分に入れる地名をどうするか決めかねていて、公募で多かったところを「民意」ということで採用するつもりだったのではないか。
結局、今回の件は話題性による広告効果は抜群であり、関係者のねらいどおりなのかもしれない。
しかし、駅名そのものや公募という手法も含めて、やはりすっきりしない結果ではある。